2018年1月9日

mother house モデルハウス 東舟岡町の家~暮らし設計(7)~

交通事故死より多い家庭内の事故死

日本で、交通事故で亡くなった人の数は、1995年には約1万5千人だったのが、年々減少し、2012年には、半分以下の約6千人となりました。それに対して、火災や転倒など家庭内での何らかの事故で亡くなった人は1995年には1万人強だったのが、2012年には約1万5千人に達しています。交通事故で亡くなる人の数より、家庭内の事故で亡くなる人の数の方がはるかに多くなっています。

最も死亡リスクの大きい季節は「冬」

「家のつくりやうは夏をむねとすべし」。「徒然草」でそう書き残した兼好法師の教えは今も通用するのでしょうか。
昨今、日本の夏は過酷で、夏になると「熱中症で搬送された」という報道が目立ちます。総務省消防庁の「平成29年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、熱中症で救急搬送された人は全国で5万2984人で、救急搬送された人のうち熱中症が原因で亡くなった人は48人でした。
明治時代までは、新鮮な食材が調達しにくく、食が原因で命を落とす人が多いことから、1年のうちで最も死亡者数が多いのは夏でしたが、現在、最も死亡者数が多いのは冬。
平成28年では12月が最多、ついで1月で、最も少ない月は6月でした(厚生労働省人口動態統計より)。

さらに、住宅内での死亡者数を疾患別で見てみると、心疾患や脳血管疾患など循環器疾患で亡くなる方が、悪性新生物(ガン)よりも多いことが分かります。循環器疾患が発生する主な要因となるのは、高血圧。特に被害が集中しているのが65歳以上の高齢者です。
これからますます高齢化が進み、2025年には65歳以上の人口が総人口の3割以上となると言われます。
イギリスの住宅の健康・安全性評価システム(HHSRS)の報告では「室温が16℃以下では高齢者に関しては呼吸器疾患や血管疾患などの大きな健康リスクがあり、10℃以下では心臓発作、脳卒中などの心血管疾患による冬季の死亡率が50%上昇する。年齢別に室温と血圧の関係を調べたところ、高齢者ほど室温低下によって血圧上昇を起こしやすいことがわかってきた」としています。

住宅内の「温度差」こそ要注意

大きな「温度差」を急激な血圧変動をもたらし、血管へのダメージを大きくするのが「ヒートショック」です。
冬の寒い晩、暖かい寝具の中から起き出し、冷えた室内や廊下を歩き、トイレで用を足す間の温度差は、20℃近くになることがあります。トイレで立ちくらみを覚えたり、ひどい時には意識を失ってしまうこともあります。暖かいリビングから移動し、洗面室で洋服を脱ぎ、浴室に入って冷たいタイルに触れると、温度差は10℃以上になることもあります。その結果、ヒートショックなどにより意識を失い、溺死など風呂場で起きる事故が後を絶ちません。

平成29年1月に消費者庁が発表した「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故にご注意ください」によると、家庭の浴槽での溺死者数は11年間で約1.7倍になり、平成27年に4804人となりました。このうち約9割を65歳以上の高齢者が占めています。
これらは、救急車の到着時点で風呂場で亡くなった人の数字なので、風呂場で倒れて搬送された後に亡くなった人を含めるとさらに増えると思われます。死亡を免れたとしても、脳血管疾患等による後遺症で介護が必要となる場合もあります。
寒冷地では、寒冷地仕様の建築工法や建材で住宅が作られていますが、比較的温暖な地域の方が住宅の寒さ対策が遅れていることが多く、実は健康面でのリスクが高くなります。今は「冬の家のつくりよう」が問われているのです。

住宅の断熱性と気密性の向上が鍵

低温や温度差の観点から健康面へのリスクがある住宅は、断熱と気密に問題があります。
住まいの断熱性が低いと、寒い季節には結露が起きやすくなります。結露が原因で木が腐る、鉄がさびるなど家が傷み、弱くなりますし、カビが発生したりダニが増えたりして、アレルギー疾患を持つ人には酷な環境になります。
住まいの断熱化は重要なのですが、日本ではなかなか進んでいません。しかし、ここまで冬に健康を害するアクシデントが多いことを考えれば、寒さを解消し、健康的な住空間にすることは必ずすべきなのです。
住宅の断熱性を上げると、外気の影響を受けにくくなり、暖房している部屋としていない部屋の温度ムラが小さくなります。さらに、暖房をつけた後に早く暖房効果が現れるだけでなく、暖房を消した後の温度低下を小さくする効果もあるので、光熱費を節約できます。また、断熱施工と適切な換気システムを活用すると結露しにくく、カビやダニの発生も抑えることができます。
また、断熱性能と同じくらい住宅の気密性能は大切です。気密性能が高まると、すき間風が入りにくくなり、冬場足元が寒いなどの現象がなくなります。

住まいの温度の観点から住み替えを

まずは、住まい選びの時に、間取りやデザイン、収納だけでなく、冬の低温や温度差をどう防ぐ家かという観点を忘れてはいけません。QOL(生活の質)の向上のために、新築の際には断熱や気密のことを一度考えてみてください。
マザーハウスでは25年間ずっと高気密・高断熱住宅をつくり続けてきました。
最新の東舟岡町の家ももうすぐ完成。2月に完成見学会を開きます。

※参考文献「あたらしい家づくりの教科書」(新建新聞社)/「HEAT20設計ガイドブック」(建築技術)/すこやかに住まう すこやかに生きる(慶応義塾大学出版会)/岩前篤(近畿大学建築学部長 教授)住まいのガイドブックあんじゅ
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