京町家
「京都らしさ」を満喫できる京町家が依然人気だ。
現在京都市内には4万戸以上の町家があるそうだが、
京都市も耐震改修の助成等で町家の商品価値を高め、
流通促進を支援している。
最近は町家を店舗として利用する例も多く見られる。
だが、伝統的な京町家はもともと職住一体型の住居で
商人の暮らしと知恵から生まれたものだ。
そこでの暮らしがあって初めて伝統的な町家の良さが伝わる。
先日、市内下京区にある
伝統的な京町家「秦家住宅」におじゃました。
築後140余年を経過し、
京都市登録有形文化財となっている。
夏の祇園祭の山鉾で「太子山」を担ぐ、その名も太子山町に位置し、
元禄時代から続く薬屋だそうで、「太子竒應丸」の看板が今も残る。
驚くべきことに、今もなお、
秦家の方々がこの町家で昔ながらの暮らしを営んでおられる。
住人が入れ替わらずに、初代からずっと受け継がれ守り続けられている町家は
意外と少ないそうだ。
夏のしつらえが見た目に涼しく、
また実際京都の真ん中に位置しながら
風が良く通り心地よい。
今回、職業柄よく持ち歩くサーモセンサーで
室内と中庭の表面温度を計らせていただいた。
室内(客間)床33度。ちなみに外気温は35度。
中庭29度。
中庭や土間が暑くならないことで風が心地良く感じる。
住人の秦めぐみさんは、京町家での暮らしについて、
やはり夏は2階が非常に暑いことや、
冬の底冷えの大変さを述べておられた。
だが、天気や時間帯によって変わる風向きを感じたり
季節によって変わる陽射の色、肌に感じる建具の感触など、
その暮らしぶりは感性豊かだ。
またそこで育まれた人間的な品性も伝わってきて感心した。
もちろん、秦家住宅のように敷地の広い京町家はある種特別だ。
現在の住宅市場で一般的とはいえない。
私が提案したいのは、
形だけを取り入れて安易に「京都らしさ」を獲得するのではなく、
感性は豊かに、現代の生活にあわせた健康を育む住まいづくりだ。
「京都を楽しむ住まいづくり」
これからも追究していきたい。