2013年7月30日

天然木曽ヒノキ


遠い昔から優れた建築材として知られていた木曽ヒノキ。
映画化もされた山本兼一著『火天の城』(松本清張賞受賞作品)では

「天高くそびえ立つ天下一の城をつくれ」と
織田信長より安土城の築城を命じられた宮大工、
岡部又右衛門が
「そのためにはどうしても木曽ヒノキが必要である」と
敵対する武田軍、木曽義仲の領地へ単身探しに行くくだりが
物語の主軸となっている。
国宝・姫路城の昭和の解体大修理の際にも、
25メートルの「心柱」取り替えをめぐって
木曽ヒノキをめぐる職人たちの熱い戦いが
心柱物語として語り継がれ
数年前にNHKプロジェクトXでも放送されていた。
ヒノキの耐久性は
世界最古の木造建築物である法隆寺に使われ、ケヤキを越えると言われている。
なかでも天然の木曽ヒノキは厳しい環境で長い年月をかけて育つため
木目がつまることで強度にも優れ、香気や光沢にも富んでいるという。
現在でも社寺建築等に全国で利用されている。
今年第62回の式年遷宮を迎えた伊勢神宮。
この20年に一度行われる遷宮に必要とされる木材も木曽ヒノキだ。
その神聖なる木材を確保するために守られてきたのが神宮備林、
現在「木曽ヒノキ備林」と呼ばれる国有林である。
厳重に管理されているこの天然林を、先日特別に見学させてもらった。
これは木造住宅を扱うものとして貴重な機会であり
社員研修の一環として社員全員で見学した。
岐阜県と長野県の県境付近に位置する「木曽ヒノキ備林」

加子母(かしも)裏木曽と呼ばれる地域だ。
細い山道に厳重に施錠されたゲート

このようなゲートを4つほど通らなければ目的地へは進めない。
厳重に維持管理されている聖域だ。
遷宮に必要な木材は長期間かけて少しずつ用意されるそうだが、
今年10月の遷宮で新たに御神体を納めるための御神木。
すでに8年前に伐採式は終了していた。

御神木を切る際に途中で割れてしまわないように
三か所を残しながら斧で切っていく古式伐採法の後が残っていた。

天然林は人工林に比べ、急斜面が多く土質がやせている。
木の根元にはシダなどの美しい下草が育つ。

そのような厳しい環境で生きる木々にたくましさを感じる。


斜面に育つ木々は自分の体を支えるため湾曲しながら伸び上がっている。
だが古来より、建物の心柱などでは曲がりのない真っ直ぐな巨木が求められる。
この名木と呼ばれる形の良い大ヒノキはそう簡単に見つかるものではないそうだ。
昭和56年にようやく発見されたという二代目の大ヒノキ

樹高26m、胸高直径154㎝、樹齢1000年。
威厳と風格を備えた裏木曽一番の名木だそうだ。
備林見学の最後に美しい滝も見ることができた。

山々から豊富に湧き出る水。

自然の恵みが、全ての生きものをたゆまなく育み続けている。

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