2009年1月26日

世界的登山家 山野井泰史

昨年NHKのドキュメンタリー番組で妻の妙子さんとほぼ垂直の壁を1000M以上登る様子が放映された。
仲睦まじい姉さん女房の妙子さんも世界的に有名な登山家である。昨年秋には山で熊に頭をかじられ傷を負った人としてもニュースで取り上げられた。
それでは、これから山野井さんが思う山との関り合いと生きざまについて書いて行きたいと思います。山をこよなく愛する 突きぬけた一人の人物がここに浮かび上ってきます。
 「2002年のギャチュンカン北壁で雪崩に見舞われたトラブルから生還したのも奇跡といわれていますが、ボクは奇跡ではないと思っています。雪崩によって妙子が岩壁に宙づりになったのですが、生きて帰るために脳をフル回転させ、最善の選択をしました。
 今まで運にまかせて登ったことは一度もありません。どんなときでも、何が起きても、自分だけで解決する覚悟で、最悪のシナリオを描いています。たまたまボクも妙子も凍傷で手足の指を失ったこともあって、ドラマチックな生還といわれていますが、そんなに悪い登山だったとは思っていません。
 自然は複雑で分かりづらいのですが、全方位に五感を働かせていると、変化を予感できるものです。危険予知能力はほかの人よりある方だと思います。命を落としたクライマーが多い中でボクが生き残っているのは、学習経験を蓄積する能力が高かったからだと信じています。
 蓄積できず高いレベルに行けない人もいれば、蓄積していないのに誤って難しいことをしたしまった人もいる。ボクの実力は全盛期を「十」とすると今は「六」であって「六・五」ではありません。それを認識しているので「六・五」の山には登りません。
 僕の半生は本当に恵まれていたと思います。自分でも異常だと思うほど山が好きで四六時中、山のことだけを考え、登ってきました。三十年間やり続けていても全く飽きない。どんな人よりボクにはヒマラヤが美しく見えている気がします。
 将来のためこれだけお金をためなきゃいけない、とはまるっきり考えていません。山以外にお金を使うことはないから、生活に
それほど困るとも思わないんです。山に登れさえすれば楽しく生活していけます。
 ボクは七十歳、八十歳になっても、妙子と小さな岩にでも登れれば最高の人生だと思っています。でも、どんなに注意していても山で死ぬかもしれない。
 クライマーは山で死んではいけないといわれますが、山で死んでもいい人間もいると思うのです。その一人がボクだと思っています。自分にとって山で死ぬことはごくごく自然なことです。ある日、山で突然、死が訪れても覚悟ができています。どんな悲惨な死に方をしても悲しんでほしくありません。」
 今まで私は 山登りは危険なので、やる人の気が知れないと思っていました。しかし、私はNHKのドッキュメンタリーを見て、そしてこの文章を読んだ時、生きることの充実感を知り、彼の「生きる覚悟」に心を動かされました。
 山野井泰史さんは 真剣に充実した人生を生きる数少ない日本人の一人ではないかと思います。
参考文献 2008年11月7日 日本経済新聞夕刊 人間発見コラム