2014年7月31日

祇園祭 -後祭-


(御池通りを巡行する大船鉾)
四条新町を下がると、
組み立てられた「大船鉾」のまわりにたくさんの人が集まっていた。
150年振りに戻ってきたという。



真新しい白木の輝き。
通りから家のしつらえを眺められるのも、この祇園祭ならでは。

数日後、後祭巡行。
北観音山が目の前を通りぬけていく。

星模様の幻の絨毯が目の前にある。
南観音山


飛天奏楽のタペストリー
鯉山

タペストリーはBB ブリュッセルブラバンド(ベルギー製)の天竺織。
約400年前の織物。題材はトロイヤ戦争。 
後祭の巡行最後を飾るのは
幕末以来約150年振りの復興を果たした「大船鉾」である。

前祭の船鉾が「出陣船鉾」と称されるのに対し、
大船鉾は「凱旋船鉾」といわれるらしい。

徐々に近づいてくる大船鉾。


屋根の銅板葺きが光り輝く。
大勢の人に見守られて歴史が続いていく。
列の最後を担うのは花傘巡行。
ミスきもの

宮川町

祇園甲部


鳥に扮した子供たちが可愛かった。
四条御旅所の三基の神輿。

7月24日の夜、氏子によって八坂神社まで担がれていくことになる。
京都の一カ月に及ぶ特別な夏が終わりに近づく。

祇園祭 -前祭-


場所は河原町御池。
時は7月17日。
祇園祭 山鉾巡行。
先頭の長刀鉾がやってくる。
長刀鉾には、
今から700年前の中国北西部モンゴル帝国の絨毯が飾られる。
釘を使わず縄で組み上げられた「動く美術館」が
次々と目の前を曲がっていく。
函谷鉾(かんこほこ)

鶏鉾(にわとりほこ)

鶏鉾にはトロイヤ戦争のタペストリーが飾られている。

蟷螂山(とうろうやま)

からくり細工のカマキリが動くたびに歓声が沸き上がる。
月鉾(つきほこ)

円山応挙の花鳥図や、ムガル王朝の絨毯が鉾を彩る。
月鉾の辻回し。
放下鉾(ほうかほこ)

前祭の最後を飾るのは
船鉾(ふねほこ)


船鉾の後ろ姿を見送る。
京都に住んでいても祇園祭の山鉾巡行をじっくり見る機会は意外と少ない。
京都の雅と歴史を感じる祭りを今年は十分に味わうことができた。

2014年7月16日

折り紙


「折鶴」や「紙飛行機」など
昔から日本人に馴染みのある折り紙。
最近はその芸術的側面が再評価され
新しい折り方や利用法も次々と考案され人気だという。
実は私の母は自宅で教室を開くほどの折り紙好きである。
以前このブログでも紹介させていただいたが
毎年元旦、我が家で最初に使う箸は
きまって母オリジナルの箸袋におさめられているのである。
絵を描くことが好きな母は観察力が鋭い。
何か思いついたらそれを折り紙で形にしたくなるらしい。
常に「新作」を完成させている。
そんな母の作品が
先日NHKの地域(京都)のニュースで紹介された。

オリジナルの様々な箸置きがズラリ。

一点だけ添えてある箸袋は我が家で元旦に使った箸袋と同じである。
絵画や折り紙は年を重ねある程度筋力が落ちても続けられる趣味だ。
そのような趣味に没頭できる母が少々うらやましくもある。

今日も一体どんな折り紙をつくっているやら。
ものづくりには限界がない。

2014年6月25日

鷹峯 -光悦寺-


会社から大徳寺をぬけ、
鷹峯街道のゆるやかな登りを30分ほど歩いたところに
本阿弥光悦ゆかりの「光悦寺」がある。
先日、久しぶりに訪れた。
紅葉で有名な観光地であるが、新緑の頃のもみじも美しい。

自然と融合した造形美が光悦の世界へといざなう。
有名な「光悦垣」

竹垣のなだらかな弧を描いた曲線は地中に沈み込む。
空間に奥行を生み出す造形美にただただ感心する。
茶道への造詣が深く芸術分野に広くすぐれた才能を発揮した
本阿弥光悦は徳川家康からここ京都鷹峯の地を拝領し
一族や職人集団を集め理想郷としての芸術村をつくった。
没後は日蓮宗の寺となったが、
光悦寺境内には現在も七つの茶室が点在している。

借景の山々に建物が溶け込む。
点在する茶室をつなげる 山中のそよ風、うぐいすの鳴き声が心地よい。
少しだけゆっくりした時が流れている。

2014年6月12日

龍谷ミュージアム


龍谷ミュージアム(京都市下京区堀川通正面下る/西本願寺前)
先日、龍谷ミュージアムにて開催されていた
『チベットの仏教世界』展に行ってきた。

仏教伝来の歴史的な奥深さを実感する
見ごたえのある展覧会だった。
ミュージアムの正面には
世界文化遺産の「西本願寺」がある。

この西本願寺に向き合う形で位置する龍谷ミュージアム。

この建物の特徴の一つは
強い西日を遮るセラミックの「すだれ」であろう。

夏の冷房負担を減らすと同時に
京都らしい景観をつくりあげたデザインはすばらしい。
龍谷ミュージアムは昨年、
京都市の「環境配慮建築物最優秀賞」を受賞したことでも知られている。
今回訪れてみて、
展覧会だけでなく建物自体もじっくりと見学することができた。
1階はガラス張り。
正面の堀川通りから一本東の油小路通りが見渡せ
通り抜けることができる。

1階から地階の中庭へ降りる。

低い天井が吹き抜けの解放感をいっそう引き立てる。
風が通り抜け、光を切り取る。
階段を上がると油小路通りだ。

ミュージアム裏手の油小路通りには
多くの仏具・法衣店が軒を連ねているが
その中にひときわ目をひく建物物がそびえているのが見える。

こちらは「西本願寺伝道院」

京都市指定有形文化財である。

入口の狛犬の頭部が一味違う。

(右奥に見えるのが龍谷ミュージアム)
歴史ある街、京都の散策はおもしろい。

2014年5月26日

生活空間の詩 -建築家・吉村順三展-


三里塚教会/設計:吉村順三
(http://www.museum.kit.ac.jp/20140317.htmlより)
先日、
京都工芸繊維大学美術工芸資料館で開催されていた
建築家・吉村順三展に行ってきた。

吉村順三氏(1908〜1997年)は、
日本の木造文化のエッセンスを現代に活かしながら
木造住宅を中心とする設計活動を通して
居心地の良い、簡素で温かな生活空間をつくり続けた建築家である。
展覧会では
吉村先生が描いたスケッチや実測図などの資料も模型と共に展示されており、
建築家・吉村順三が木造建築でつくりあげようとした生活空間の姿を
今回じっくりと感じとることができた。
会場にさりげなく置かれていた休憩用の椅子

建築家コルビジェのデザイン。
さすが美術工芸資料館である。
椅子に腰掛けると目の前に美しい新緑。

自然と建造物が調和し落ち着く会場での展覧会だった。
芸術的感性に心地良く響くものに出会うと心が喜ぶ。
そんな清々しい思いがした休日だった。

2014年3月25日

心と建築


以前、建築雑誌で「心と建築」についての記事を連載された
愛知産業大学の建築学科教授、武田雄二先生が
このほどその著書全6回分を送ってくださった。
武田先生は
人間の生理・心理と建築物との関係について研究しておられ、
とくに建築仕上げ材料の触感と人間の生理・心理の関係を
詳しく研究しておられる。
建築材料学、建築環境計画学の専門家だ。
先生とは数年前にある祝賀会で同席して以来の
お付き合いであるが
このように気にかけていただいて有難い。
我々も天然木がもたらす触感「木のぬくもり」を大事にしている。
建築空間が人間に心理的な影響を及ぼすということは
誰もが少なからず経験し納得するところだろう。
武田先生の「触感」に関する考察に
「温冷感」「粗滑感」「硬軟感」「好悪感」「その他」という分類がある。
そのそれぞれを、
弊社が追究する「住まいの感覚」に当てはめると以下のようになる。
「温冷感」については、冬は暖かく夏はさらっとして、
「粗滑感」は、少しざらざらと、
「硬軟感」は、柔らか味があり、
「好悪感」については、ここちよい肌ざわりを求める。
「その他」で表わす触感は、
ついつい寝ころびたくなるような感覚を弊社は求めている。
このことをまとめられたのは
先生からいただいた文献のおかげである。
人間は五感をはじめとする「心」で空間の特性を捉えてきたが、
超情報化社会である現代、
視覚情報が偏重されすぎているように思う。
心がモノをつくり、
つくられたモノによって心がつくられる。
建築物をつくる者として
社会の流れによって大切なことが見失われることがないよう
先生が述べられている、
常に自分自身の「心の在りよう」を見つめ、
正しいと感じる方向に住まいづくりを導いていく習慣をつけたい。
武田先生の哲学的な考察は新鮮で大変勉強になりました。
ありがとうございます。

2014年3月7日

左近の梅


あちらこちらで梅が見ごろを迎えている。
京都市内には梅の名所がいつくかあるが、
現在工事が進行中の嵯峨大覚寺の新築住宅のすぐ近くにも隠れた名所がある。
真言宗大覚寺派の大本山、大覚寺。
元は嵯峨天皇の離宮で、歴代の天皇(上皇)による院政が行われたこともある
皇室ゆかりの寺院である。

宸殿からの眺め

御座所の前には
右近の橘

そして、左近の梅

「桜」ではなく「梅」である。
通常、京都御所の紫宸殿前に見られるように
左近といえば「桜」が知られており
雛飾りでもそれにならって「橘」と「桜」を飾っている。

日本を代表する花として圧倒的人気を誇る桜。
現在「梅」も「桜」もうまい具合に時期をずらして
それぞれの美しさで人々を魅了しているが
元々日本では「桜」よりも「梅」が愛でられていたという
その歴史を現代に伝えているのがこの大覚寺である。
ちなみにここ大覚寺は映画『武士の献立』のロケ地になっており
見覚えのある風景(昨年の梅)は一瞬ではあるが映画予告編にも登場している。

2014年2月16日

利休にたずねよ


歴史時代小説『利休にたずねよ』の原作者で知られる
山本兼一さんの突然の訃報に驚いたのは先週末のことだ。
57歳の若さである。
山本さんは京都生まれ京都育ち。
私の高校の先輩でもある。ご自宅も弊社からほど近い。
山本兼一さんの代表作
『白鷹伝』
『火天の城』(松本清張賞)
『利休にたずねよ』(直木賞)
三作とも読ませていただいた。
丹念な取材により登場人物をいきいきと浮き上がらせ、
小気味いい場面展開、丁寧な話の進め方で
どれも惹きつけられる作品だった。
鷹匠や大工の棟梁など、
職人の情熱を丁寧に描いたこれらの作品は高く評価され
映画化もされている。
本日執り行われた告別式では
映画『火天の城』『利休にたずねよ』の監督
田中光敏さんが哀悼の意を述べられていた。
山本さんは数年前から病に犯されていたが
現在上映中の映画『利休にたずねよ』で
「最優秀芸術貢献賞」を受賞した昨年のモントリオール世界映画祭へは
ご家族全員で行くことができたそうだ。
まだ読んでいない山本さんの作品を
今後、一つ一つ読んでいきたいと思っている。
山本兼一さんは本の中でこれからもずっと生きている。

(告別式会場に飾られていたお写真より)

2014年1月28日

My music collection no.8


五嶋みどり(vn)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
マリス・ヤンソンス&ベルリン・フィル
世界的ヴァイオリニスト、五嶋みどりさんのCD。
日本の、というより世界の「MIDORI」、
透明感のある神々しいような美しい音色は聴く人を魅了する。
昨日、ロサンゼルスで発表された第56回グラミー賞で
五嶋みどりさんがソリストとして参加したアルバムが
最優秀クラシック・コンペンディアム賞を受賞したという嬉しいニュースが流れた。
同賞は昨年創設されたものなのだそうだ。
この受賞アルバム『パウル・ヒンデミット作品集』を私はまだ聞いたことはないのだが、
発表後は注文が殺到しているという。

こちらは
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
クラウディオ・アバド&ベルリン・フィル
残念ながら、指揮者アバドさんの訃報をつい先日聞いたばかりだ。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は私が最も好きなコンチェルトである。
そのコンチェルトを彼女が凛として艶やかに奏でている。
もう一枚、
五嶋みどり17歳の時のCD(パガニーニ: 24のカプリース)

そして隣は弟、五嶋龍の2005年のデビューCD(同じく17歳)
この二人の天才を育てた母、五嶋節さんもヴァイオリニストである。
彼女は女手一つでこの二人を育てあげた。
神童といわれた二人がいかに育てられたのか
壮絶な母と子の物語がこの本に記されている。

日本が誇るヴァイオリニスト五嶋みどりさん。
ソリストとしての今後の活躍を見守っていきたい。
個人的にはもっと日本のメディアに出てほしいと思っているのだが。

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