2012年2月3日

住宅の耐震化


17年前の阪神淡路大震災後、住宅耐震についての意識が
全国的に高まった。
建築士である私も、地震後になんとか役に立ちたいという思いで、
地震直後の建物の調査に入る『応急危険度判定士』の資格をとった。
昨年の東日本大震災後、全国の判定士の仲間たちが
被災地に入って建物の危険性を調査している。
一方、今お住まいになっている住宅の耐震性能を診断するのが、
『木造住宅耐震診断士』である。
私も数年前にこの資格をとらせていただいた。

建築士として協力できる大切な役割だと思っている。
壁量計算の義務付けがない時代(1981年以前)に建てられた
古い木造住宅の多くは大地震に耐えられない。
京都府は補助金を増額して、これらの木造住宅の耐震化を
支援している。(昭和56年5月以前に着工の住宅対象)

施工業者も積極的に耐震補強に取り組むべく、
先日、NPO法人と京都府の依頼を受け
「耐震診断と耐震改修工事」についてのセミナーを行った。

我々建築家は、耐震補強を通じて人の命を守る。
あまり言いたくないが、
京都の街中を歩いている時、憂鬱な気分になることがある。
「これはもたない・・・」という家を目にすることが多いからだ。
さらに、どのように崩れるかさえ目に浮かんでしまう。
耐震化が思うように進んでいないのは、
我々建築家の働きかけも不十分なのであろう。
いつおこるか分からない地震だが、
私たちがやらなければいけないことは必ずある。

2012年1月27日

道を極める

大阪は道頓堀のにぎわいの中にある、
大阪松竹座。

毎年1月、歌舞伎界のスターが集まる初芝居、
「寿初春大歌舞伎」公演が大阪の正月をいろどる。(昨日が千秋楽)

京都南座の顔見世と並ぶ年中行事として
歌舞伎ファンに親しまれている恒例興行だ。
私も正月訪れた。
今年の公演は、
「坂田藤十郎」「市川團十郎」という、
東西の二枚看板が共演するということで
新聞でも紹介されていた。

(日経夕刊2012.1.10)
この演目、実は「市川海老蔵」」も共演しているので(写真右)、
”親子共演”という面でも話題を呼んだ。
海老蔵は一昨年、世間を騒がせたが、昨年より「本職」で精力的に頑張っている。
今回の公演でも、全演目に出演。
その貫禄や気品はやはり血筋なのだろう。
人を惹きつける魅力が存分にあった。
ところでこの演目は、
「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」という常磐津舞踊の大曲である。
役者は台詞を言わず、舞台そでにいる常磐津連中が
独特の節回しで役者の代わりに台詞を言う。
この常磐津節の大御所、常磐津一巴太夫(人間国宝)が、
実は私の父方の親戚になる。
前置きが長くなったが、実は今回の公演もそのご縁で
見させていただいた。
公演後は楽屋へ。

この演目は1回の公演でかなり体力を使うのだという。
通しで1時間半。それが約1ヶ月続く。
御歳、82歳。

役者さんを入れても最高齢だそうだ。
この年齢では奇跡と思えるほどの声の響きや節回しに感服する。
声が命の職業。
喉を守るために、タバコはもちろんアルコールも飲まず、
お茶やコーヒーなどカフェインが入った飲物も口にしない。
芸に厳しい姿勢は、話していても伝わってきて、
本物のプロを感じる。
私も自分の職業にそのくらいの厳しさがなければ、と
正月早々ひしひしと感じさせていただいた。

2012年1月22日

美味探究 part11 -「味の基本」編-

一月も終盤、すっかりお正月気分はぬけているのだが、
遅ればせながら、自家製おせちに使う「だし」について
少し紹介しておこうと思う。
一年のけじめ、一家のけじめとして
年のはじめに食べるおせちはなるべく自分でつくる。
中でも特に手間をかけるのが、
ほぼ全ての品の味の基本となる「だし」だ。
もちろん使うのは「昆布」と「かつお節」なのだが、
まず当然、素材はしっかりしたものを選ぶ。
昆布は利尻産。

かつお節は100%かつお(鹿児島県産)のけずり節。

そして、ここから少し手間をかけるところなのだが、
まずだしをとる前に、昆布に酒をふりかけておく。

1時間ほど酒に浸したのち、
低温のオーブン(100度)でじっくり熟成する。

1時間後↓

うま味がさらに豊かに引き出される我が家の「だし昆布」完成。
これを水に2時間ほど浸したのち弱火で加熱。

沸騰直前で昆布を引き上げ、
かつお節を(この時ばかりは)贅沢に入れる。

これで黄金色のうま味が凝縮された「だし」完成だ。

この「だし」が、日本の伝統料理の一品一品に、
飽きのこない自然な、それでいて上品な味をふくませる。
ささやかながら味わいを大切にした我が家のお節料理。
今年は13品つくった。

ところで先日、NHKのある番組で
現在の子どもたちの「味覚」を危惧する内容のドキュメントがあった。
ファーストフードやインスタント食品の
化学調味料の味に慣れてしまっている現代の子どもたち。
素材そのものの味を楽しむ感覚が鈍くなっているのだという。
人間が本来もっている「味」への鋭い感覚。
その感覚を退化させずに食事や料理を楽しむ感性を育むことが
人生を豊かにする本当の意味の食育だと思う。

2012年1月2日

新年の御挨拶

2012年がスタートした。
昨年は日本にとって大変な経験をした年であったが、
改めて人の温もりや絆の大切さを、みんなで共有したように思う。
今年もその思いを大切に、
お客様に喜ばれる仕事をしていきたい。
さて、今日1月2日は
昨年弊社が新築させていただいたお施主様のお宅へ
新年のご挨拶まわりをさせていただいた。
お施主様にとっては、新居で初めて迎えるお正月だ。
皆様から喜びのお言葉をいただいた。
「暖かいです」
「ゆっくりさせていただいてます」
その言葉に対し、
こうして私を含め石田工務店のスタッフ全員が
よい正月を迎えられるのも、
石田工務店が関わらせていただいたすべての
お施主様のおかげであると正直思っている。
お正月ということもあり、
本日全員の方にお会いすることはできなかったが、
また日を改めて伺わせていただく。
初めて新居で迎えられるお正月、
記念に毎年デンマークの磁器をお渡ししている。

透明感のある白色と青色が空間を豊かにする器だ。
気に入ってもらえれば私も大変嬉しい。
皆様、末永くお幸せに。
そして良いお正月をお過ごしください。

2011年12月16日

ボーイング787


(画像:ANA SKY WEB より)
今年、日本の航空会社にも導入され話題になった、
次世代中型ジェット旅客機 『ボーイング787』

「乗り心地の良さ」「静かさ」「省エネ」が注目され、
ニュースでも大きく取り上げられた。
従来機との大きな違いに、機体外部の「素材」がある。
これまでの主要素材が「アルミニウム」なのに対し、
新型787は、「炭素繊維」を使っているのだ。
この開発には日本のメーカーが大きく関わっている。
まさにMade with Japanの旅客機だ。
上空を長時間飛行する旅客機にとっての大敵は、
機体の腐食である。
従来機の機内湿度は5%以内に設定され、
内外の温度差による結露を抑えている。
(金属は極めて熱を伝えやすいため、内外の温度差があると
空気中の水蒸気が水滴に変わり金属を腐食する)
これまで機内の「乾燥」は、快適性においては欠点であった。
しかし、787機キャビン内の湿度は20〜30%にまで設定可能という。
炭素繊維が結露しにくい素材だからだ。
住宅においても、結露しにくく、腐食しにくい素材を使うことが大切だ。
そのためには、構造体に金属などの熱を伝えやすい材料ではなく、
木材など熱を伝えにくい材料を使うことが重要であることを示している。

787はエンジン後端のギザギザ型も特徴。
この形は、周囲の空気と排気を混ぜて
エンジン音を抑える効果があるのだという。
翼のしなりも、炭素繊維ならではだ。
「安全」「快適」「省エネ」
居住性における三大要素が
住宅だけでなくいろんな分野で進化している。
住宅の進化は、寒い冬こそ実感できる。
弊社1月の住宅見学会でそれを味わってもらえればありがたい。
https://isida.jp/event/index.php?e=32

2011年12月7日

銀杏 その3


今宮神社 門前通りの銀杏並木
色づきを待っていた東側(右側)の銀杏が
鮮やかな黄色に染まり、地面にも黄色の絨毯ができていた。
東側の銀杏の背面には、大徳寺の土壁がある。

この土壁には瓦がびっしり埋め込まれており、
それが壁の装飾となって京都らしい雰囲気があるところだ。

特にこの時期、
鮮やかな黄葉との組み合わせが情緒あって美しく、
昔から私の好きな景色だ。

晩秋の京都の隠れた名所だと私は思っている。
ちなみに、この土壁の内側、大徳寺境内にある
高桐院。

こちらの紅葉の風景も人気があり、観光客が後を絶たない。
わが社から徒歩3分の距離にある名所だ。
そしてその途中、西方面に見える左大文字。

こちらもきれいに色づいている。
山々を近くに望む京都の暮らしの豊かさを感じる一瞬である。

2011年11月24日

銀杏 その2


我が社からほど近い今宮神社の門前通り。
今朝の風景だ。
ここの銀杏は散るのが早い。
横がテニスコートになっていて(私の青春時代の舞台でもあるが)、
西日を浴び続ける道の西側の銀杏は、
毎年色づきも、散るのも早いのだ。

日の当たりにくい東側(写真右側)の銀杏が色づくのはこれからだ。
この時期、時差のあるコントラストが風情にも感じられる晩秋の風景だ。
もうしばらくすると、
東側にも銀杏の黄色い絨毯が広がる。
東側には大徳寺の塀があり、そのシチュエーションが
また一段と風情があっていいのだ。
楽しみだ。

2011年11月23日

談志師匠


私は自宅で時々落語を聴く。
生の舞台を聴けるといいのだが、
気に入ったものは、CDで手元に置いている。
話が始まると、即座にその世界に引き込んでしまう話術。
聴く人の頭に突如リアルな風景が現れる。
その圧倒的な話芸には本当に感服する。
立川談志師匠は、落語界ではアウトローなイメージが強いが、
誰もが認めるように、
その芸には他の追随を許さない凄さがある。
素人が聴いても、
「うまい」
の一言である。
今夜は追悼の気持ちで、談志師匠の落語を聴いた。
つくづく残念な気持ちになる。
謹んでご冥福をお祈りしたい。

2011年11月22日

銀杏


今朝の堀川通り。
今、センターラインの銀杏並木がとてもきれいだ。
特に、朝日を浴びる時間帯が黄金色に輝いて美しい。

秋の深まりを感じながら、
今夜は銀杏の実を煎って味わった。

塩をふっただけのシンプルな秋の味覚。
ちょうど鹿児島から届いたうまい焼酎とよくあう。

2011年11月13日

音楽を味わうNo.2 -1961.11.13-


50年前の11月13日、
ホワイトハウスの舞踏室で、あるコンサートがひらかれた。
第34代 ケネディ大統領の招聘による、チェロコンサート。
奏者は世界的チェリスト、パブロ・カザルスだ。
この時、御歳85才。
最前列中央に、大統領の姿がみえる。

実はこの写真は、私が特別な思いで持っているCDの
ジャケットに使われている写真だ。

(ソニー・クラシカル ベストクラシック100-No.19)
当時のホワイトハウスコンサートがそのままライブ録音された貴重な音源。
カザルスの素晴らしい演奏はもちろん、演奏中の迫力ある生々しい息づかい、
そしてケネディ大統領を含めた会場全体の反応や気配、空気感が
はっきりと伝わってくる。
およそ1時間のコンサートだが、
プログラム最後は、カザルス最愛の曲、
彼の故郷カタロニア地方の民謡『鳥の歌』でしめくくられている。

この曲には、平和への強い願いがこめられているという。
当時の政治的背景を考えると、
故郷を去らざるを得なかったカザルスが、
チェロの深くうなるような音色でまるで歌うように演奏している。
現実に対するどうしようもない憤りを、静かに伝えているように思う。
彼の切実な思いが、時空を超えてなお、聴く人の胸を打つ。
さて、何故私がこのCDを特別な思いで持っているか。
それは、このコンサートが録音された日、つまり
1961年11月13日が私の誕生日なのだ。
場所は違えども、自分がこの世に誕生した日の空気感を、
歴史的コンサートを通していつでも味わえることは、
大変ありがたいことだと思う。
私が持つクラシックコレクションの中でも、特別な一枚だ。

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