2012年8月16日
新しき土
今月の新聞に、
「世界の映画監督358人が投票で決める最も優れた映画に
小津安二郎監督の『東京物語』(1953年)が選ばれた」
という記事があった。
小津安二郎監督作品は私も好きで、
中でも『東京物語』は数回観ている。
この作品で、
「上品で健気な」イメージを決定づけた伝説的女優が、
原節子だ。
彼女のデビュー間もない(当時16歳)の主演映画、
『新しき土』(1937年)が
75年ぶりに全国でリバイバル上映されているという。
パンフレットを見ると、
この映画は、日本とドイツの合作映画で、
日本側の監督は伊丹万作(伊丹十三の父)、
ドイツ側は巨匠、アーノルド・ファンク。
また、
ヒロイン原節子の父に国際スター、早川雪州
スタッフに
日本初の特撮技術で若き日の円谷英二
音楽は山田耕作
挿入歌の作詞に北原白秋と西條八十
日本を代表するスタッフが集結して作られている。
この夏京都でも上映していることを知り、
興味を持ち観に行った。
主役、原節子の、物悲しい
寂しさを感じさせるまなざしが印象的だった。
だが、率直な感想としては
作品の内容よりも、
当時の日本とドイツの軍事的接近による製作意図を
色濃く感じた。
日本人と日本国の紹介映画というべきか。
ドイツ人のためと思われる日本の美しい風景のオンパレードだった。
実際、後で調べてみると、
ヒトラー自ら検閲してこの映画のドイツ公開を許可したという。
生々しい戦前の時代背景がおのずと伝わってくる映画だ。
二度と繰り返してはならない時代がつくりあげられていく
というやるせなさを、この映画を通して感じた。
奇しくも昨日は、67回目の「終戦の日」。
この映画が今、公開されている意味を
深くとらえていきたい。