2013年7月16日

日本の風土に根ざしたものづくり


以前このブログで
京都の南西、山崎にある住宅「聴竹居」について紹介させていただいたが、
先日、天皇皇后両陛下がこの住宅をご訪問されたことで
聴竹居のような日本の風土に根ざしたものづくりについて
また新たに見つめなおす機会をもった人が増えたかもしれない。
この聴竹居のすぐ近くにあるのがサントリー山崎蒸留所。
先日ここへ初めて見学に訪れた。

「日本の風土にあった、日本人に愛されるウィスキーをつくろう」
サントリーの創業者である鳥井信治郎氏が
輸入品ではなく国産にこだわって、日本で初めて開設した蒸留所である。
日本の風土に根ざしたものづくりにかける思いは
聴竹居という住宅にかけた藤井厚二先生の思いにも通じるところがあるだろう。
今や世界に誇るウィスキーブランド「山崎」だが、
その歴史や製造工程をつぶさに見学すると
京都の名水が育んできた文化というものに改めて気づかされる。
ウィスキーの原料となるのは二条大麦。
名水と合わさり発酵した液は2回の蒸留が行われる。

巨大な蒸留釜(ポットスチル)は、よく見るとそれぞれ微妙に形が違う。
この形の違いで多彩な個性の原酒がつくられるのだそうだ。
山崎の湿潤な風土に横たわるホワイトオークの樽の中で
原酒が琥珀色のウィスキーへと変わっていく。

驚いたことに、貯蔵庫内の温度は一切調節していないそうだ。
まさに日本の風土にあった、日本人に愛されるウィスキーづくりである。

貯蔵庫を出るとすぐのところに清流がながれていた。

山崎の気候と水が、
ここだけのシングルモルトウィスキーをつくっている。

左:山崎18年

2013年6月27日

空間をつくる -採光計画 編-


室内への光の取り入れ方で住環境の快適性は大きく変化する。
なるべく自然光を室内に取り込む工夫をしながら、
季節によって異なる日射角度を考慮した採光計画が
快適な住宅づくりの重要なポイントになる。
吹抜けにトップライトを設けると、
狭小間口の住宅でも中央部に
より多くの光を取り込むことができる。
逆に窓を床面近くに設けたり
外からの光をグレーチングで
ワンクッション受け止めることで
室内に入る光をやわらかくデザインすることもできる。

最近は室内と外部空間との一体感を持たせるために
フルオープン開口窓の計画も多い。


一方、窓を小さく分割することで
外からの視線を遮りながら
移りゆく光の変化を楽しむことができる。



また欲を言うならば、
窓からの眺めは住む人にとって
心やすらぐ絵画のようでありたい。

通風や家族のコミュニケーションを考えて
つくられた室内窓

部屋から比叡山が望める仕掛けでもある。
室内の心地良さを中心に考える採光計画だが、
夜になると一転、
今度は室内の明かりが外へ放たれる。


住まいが持つ違った表情が現れる。

2013年6月9日

美味探究 part21 -梅酒 編-


梅が出回る季節だ。
会社近くのONE DROPさん
奈良吉野産、特別栽培の青梅を購入してきた。
早速「梅酒」用に仕込む。
梅酒用に使う酒は、上京区大宮寺之内の鵜飼商店で購入した
アルコール35度の「梅酒用米焼酎」。
一般的なホワイトリカーより、
米の旨味でのどに優しくまろやかになる。
鵜飼商店は創業100年以上、目利きの店主がいることで有名である。
また氷砂糖には、HELPで購入した
すっきりした甘味の国産ビートが原料のものを使った。
ちなみに、先日漬けたラッキョウは、八百一で購入したもの。
こちらはもう食べごろになってきた。
梅酒は飲みごろになるまでこれから半年以上待たねばならないが
楽しみだ。
昨年仕込んだ梅酒の残りもまだある。
こちらは頂きものの無農薬の梅を使用。

残りの梅はこれからジャムやソースに活躍する。

2013年6月2日

My music collection no.6


静かな雨の日にかけたい一枚。
「ジョアン 声とギター (Joao Voz e Violao)」
声とギターだけのデリケートで軽やかなサウンド、『ボサノヴァ』だ。
『ボサノヴァ』という新しい音楽ジャンルを50年前に世に出したのが
ブラジル人のジョアン・ジルベルト。

これは彼自身のソロ・アルバムだ。
「これよりいいものと言ったら、沈黙しかない。
そして沈黙をも凌駕するのは、ジョアンだけだ」
(カエターノ・ヴェローゾ)
カエターノのプロデュースによって今から10年前に
録音されたものである。
話しかけるような優しい語り口に、ギターの音色が見事に重なり合う。
梅雨時の静かな雨音を背景に繰り返し聴きたくなる曲だ。

2013年5月19日

ライフスタイルと自然との調和


先日、京都で活動されている建築家お二人のご自邸を
拝見させていただく機会を得た。
どちらも京都市左京区松ヶ崎にあり、
信念あるライフスタイルを実現させる邸宅で
美しい新緑との調和も印象的だった。
最初に訪れたのは
建築家 吉村篤一氏の自邸

38年前に建てられたもので、
歳月を重ね、建物が木々の緑にとけ込んでいる。
玄関をつらぬくアプローチのタイル貼りも
庭の緑と一体となっていた。


広々としたダイニングキッチンの上に後で造られた
「橋」を思わせる書斎スペースが空間を引き締める。

いたるところに収納スペースが設けられていた。

歳月を重ねた木の風合いもまたいいものだ。
次に訪れたのは、
建築家 駒井貞治氏の自宅兼事務所。

この住宅の驚くべきところは、
巾2.5mに対し、なんと長さ60mという細長い敷地だ。
農業用水路に添うようにして建っている。

初夏には蛍が舞う清流だという。
水路沿いの植栽をそのまま住宅にとりこんでいるところもさすがだ。


驚くことは住宅内にもみられた。

細長い空間にほとんど壁は無く、
水路に面してとられた大きな窓により
家中が明るく見通しが良い。

それぞれのライフスタイルを大事にした
住まいの考え方に共感をもった。
晴天の新緑鮮やかな休日、
見学させていただいたことに感謝して、
木々の緑と水に囲まれた松ヶ崎を後にする。

2013年4月24日

美味探究 part20 -京たけのこ 編-


先日、長岡京で採ってきた朝掘りのたけのこ。
持ち帰って早速すべて下ゆでした。

このたけのこは水につけ、時々水を替えると
一週間は保存できる。

まずは掘りたての味をそのまま味わってみる。

何も味つけしなくとも、甘味があってみずみずしく美味しい。
まずは苦労して採った旬の味をかみしめた。
次はだしで煮て

品良く薄味の含め煮に。

そして定番の若竹煮。

さっと炙って田樂風にもしてみた。
合わせ味噌版

白味噌版

こちらも定番、筍ごはん。
まずシンプルに旬の香りを楽しむ。

別の日に具だくさんバージョンで。

春の味覚、菜の花としいたけ、かぶ、豆腐と共に煮ものする。

新じゃが+菜の花+たけのこのポテトサラダ

これですべて使いきる。
やはり旬の食材は美味しい。
たけのこ三昧の一週間だった。

2013年4月15日

京たけのこ


春の味覚、たけのこ。今、旬を迎えようとしている。
中でも京都産の「京たけのこ(孟宗竹)」は味が良く、
全国でも高級ブランドとして名高い。

弊社のお施主様が数多くおられる長岡京市は
竹林が多く、「京たけのこ」の代表的な産地だ。

たけのこは、竹林に勝手に生えてくるというイメージから
手間ひまかけて「栽培」しているという印象はあまりもたれていないようだ。
だが実際は一年を通して竹林の整備が行われ、人の手が必要な「農業」だ。
たけのこ用の竹林は美しく整備され、一目みて分かる。

まず毎年「土入れ」「ワラ敷き」が行われるため地面はやわらかく美しい。
また親竹が重みや風で倒れないように枝は適宜刈り取られ、
芽を出さなくなった古株の竹も随時伐採されるため、日差しが入り明るい。
竹林は手を加えなければすぐにただの「竹やぶ」となってしまい
そのような放置林では美味しいたけのこは生産できない。
地元の方々の一年を通しての竹林への愛情あっての「京たけのこ」だ。
竹林を整備する取り組みには弊社お施主様も関わっておられる。
長岡京市では観光協会も地元「京たけのこ」生産の現場を
この時期一部公開、たけのこ掘り体験(申込制)を企画している。
先日、この企画に参加、初めて「たけのこ掘り」を体験した。
地面表面のわずかな芽をみつけ、

周りを掘り下げていく。

ここから傷つけないように収穫するのが
慣れていない者には至難の業だった。かなりの力作業だ。
長い専用のクワで、テコの原理を利用する。


慣れている人だと2,3分の作業らしいのだが、
たけのこ1本につき、10分以上格闘した。
多くの家族づれで賑わっていた竹林

作業後、全家族の収穫分を集めた上で均等に分けられる。

高級たけのこがずらり。
気持のよい汗を流した春の休日の朝だった。
この収穫をさっそく下ゆでしておくことにしよう。

2013年4月8日

京都の桜


日曜日、弊社お施主様(T様)が主催している「自然観察会」に参加するため
京都府立植物園を訪れた。
先週末の強い風雨で園内の桜が心配だったが
咲き誇る花々は健在。見事だった。

「桜前線」という日本独特の言葉が示す通り、
日本人なら誰もがその開花を楽しみにする国花、桜。
今年、京都の桜の開花は昨年より12日も早かったそうだ。
観察会を主催するT様の説明のもと
様々な色、形の桜をじっくりと鑑賞させてもらったのだが
とにかく園内の桜は実に種類が豊富である。
狭い範囲でこれだけの種類が鑑賞できるのは植物園ならではだろう。
京都には数々の桜の名所があるが、案外穴場かもしれない。
「植物園のこの時期を逃すともったいない」と、T様はおっしゃっていた。
雨上がりの桜もまた、艶やかで美しかった。
清楚な八重桜 「佐野桜」

黄緑色の桜 「御衣黄(ぎょいこう)」

葉が桜餅に使われるという「大島桜」

色形が異なる様々な桜が並ぶ

古木に根をはり、新たに花を咲かせている健気な桜もあった。

竹筒を使い、新しい根を土に誘導している。
植物園の方たちの愛情を感じる一本だ。
そして桜に集まるのは人だけではないようだ。

木々を見上げるたびにいろんな種類の鳥を目にした。
春の花は色鮮やかで明るい気持ちにさせられる。

植物園の春はまだまだ続きそうだ。

2013年3月26日

熊野古道 -伊勢路・馬越峠-


古くから大勢の参詣者が歩いている「祈り」の道、熊野古道。
世界遺産だ。
以前から一度は歩いてみたかったのだが、
先日の日曜日、熊野古道の中でも最も美しいといわれる
伊勢路の馬越峠を念願叶って歩くことができた。
三重県紀北町から隣の尾鷲市へとぬける山道だ。

このコースは「石畳」の美しさで知られている。

この日も大勢の人が休日のハイキングを楽しんでいた。

現在は登山用の装備が充実しているため快適に歩けるが、
昔の人たちの峠越えは大変だっただろう。
尾鷲市は日本有数のヒノキの産地。
ここ熊野古道の「尾鷲ヒノキ」の美林は圧巻だ。

花粉症の人には酷な風景なのかもしれないが、
すれ違うハイカーたちは誰もマスクはつけていない。
空気は澄んでとてもきれいだった。
林にはヒノキだけでなく、スギの巨木もところどころで見られ
悠久の時を感じながら歩いた。

また、古道の美しさを際立たせているものに、
沿道の「シダ」がある。

青々と原生のままに茂っているようだった。

ところで、山道ではヒノキの「間伐材」が伐採後そのまま
放置されている光景をあちらこちらで目にした。

間伐材が利用されることが時と共に少なくなり、
山から下ろす手間に対価が合わないため捨てられている。
日本の林業の厳しさを感じる。
登り切った馬越峠では、
尾鷲市を眼下に桜がほころびはじめていた。

コースの最後に麓で立ち寄った尾鷲神社。
ご神木の「夫婦楠」は樹齢1000年を越える。

日本有数の豪雨地帯としても知られる尾鷲だが、
幸い天気にも恵まれ、
ヒノキやスギなど、住宅の建材としても馴染み深い
木々の神聖さに存分に浸り、
パワーチャージできたような気がする。

2013年3月20日

プリツカー賞


(伊藤豊雄建築ミュージアムwebサイトより)
先日、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」に
伊藤豊雄氏が選ばれたというニュースが流れた。
最近の日本人の受賞は1995年に安藤忠雄氏、
3年前に日本人チームとしてSANAA(妹島和世、西沢立衛)が受賞している。
伊藤氏がつくる建築は美しい。
多摩大学図書館(東京)

TOD’S表参道ビル(東京)

仙台メディアテーク(宮城)

建築基準を満たしながら
高いデザイン性を表現するのは大変難しいことだと思う。
一般の住宅向きではないが、
彼の被災地での復興支援活動を見ていると、
必ずしもデザインだけを追求しているのではなく、
もっと大きい意味での建築の可能性を探っていることがよくわかる。
昨年の第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展でも
彼がコミッショナーを務めた日本館が「金獅子賞」を受賞した。
現在東京の「ギャラリー・間」で凱旋の帰国展を開催している。

(ギャラリー・間webサイトより)
伊藤豊雄氏は昨年末、
東日本大震災の被災者が自由に交流できる憩いの場として
「みんなの家」を完成させた。
地域の交流が復興につながるとの熱き想いで力を注ぐ。
日本館で展示された陸前高田の「みんなの家」模型

建築家の仕事と工務店の仕事はスタンスが違うのかもしれないが
建築というものを通して社会に貢献する立場は同じであると思いたい。

Webからお問い合わせ 0120-296-481